小さな回復の喜び
官事務所では毎週水曜日の午後だけ個人指導として官足法の施術を体験してもらう時間を取っています。
官足法をしっかりやればどんな風に身体が変わるのかを体感していただくとともに、ここまでやるんだ、やっていいんだ、ということをわかって頂くために。
体験ですから一度だけでよいのですが、ご自分で毎日官足法に取り組む人の中には一ヶ月~数か月おきにいらっしゃる方も…。どこが足りないかを知ったり、モチベーションを維持するために利用されているようです。
そんなお一人にパーキンソン病で腰が直角に曲がっていたOさんがいらっしゃいます。
初めて事務所にいらっしゃったのは一月下旬でした。二本の杖に頼って歩かれており、腰が曲がっているだけでなく首も上げづらい様子でした。一通り施術が終わると腰も首もかなりシャンとなります。それは時間とともに元に戻っていってしまうのですが…。
「お金を払ってこんなに痛い思いをするなら自分でやるという人もいるけれど、私は他人に頼ってお金を使ってでもしないとよくなれないと思うから、ここに通いたい。」と仰り、最初の頃は3週間ごとにいらっしゃっていたかと思います。
二度目にいらっしゃった時、事務所のみんなが驚きました。腰の曲がりが60度ほどになり、お顔がわかったからです。お洋服も明るい薄緑色だったかおしゃれになっておられて、こんな方だったんだ…と。聞けば毎日痛いけれどがんばってウォークマットⅡを踏み、ふくらはぎや太腿などももんだとのこと。「ここでやって頂くほど強くは到底出来ないんですけど。」と言われますが、それでいいのです。自分ができる精一杯をなるべくやるだけで少しづつ出来るようになっていくので。
時には「やる気になれなくてサボってました。」という時もありながら、少しづつ毎日の習慣にしていったOさん、今は多少腰の曲がりはあり、少し首は傾いているものの、自分で姿勢を正してシャンと真っ直ぐ立つことができます。
日々は同じように過ぎていくけれど、努力した日々は痕跡を残します。
元気だったのに突然病気になって一時は絶望したというOさん、「なんでこんな病気になってしまったのかしら。」と思わないわけはありません。けれど、ほんの少し楽になる小さな変化をたくさん喜んでこの一年を過ごされました。
もしどなたかいま絶望に足を引っ張られそうになっていたら、Oさんの体験を花束にして贈りたいと思います。
病気になったことは残念だったけれど、それがなかったらOさんは自分の中に秘められていた力や、たくさんの小さな回復の喜びを知ることはなかったでしょうから。