官事務所の窓

小さかった頃、晩秋になると父は、とっぽりと熟れた柿を家にあった大きな柿の木からもいで、それが大好きだった伯父のために綺麗に木の箱に並べて待っていた。

田舎の家にはどこの家にもそんな家族の思い出がたくさんあるに違いない。

だから、柿の木を伐るために補助金が出る、というニュースに驚いた。

熊を避けるためだそうだ。

寂しい気もするが、人の命を守るためには仕方がない。

けれど、ならば熊を飢えさせずに済むように、また、数が増え過ぎないよう注意して

山に柿の木を植えてはどうだろう。

お腹を空かせて里まで来て餌を求める熊の姿が

いつか人間の姿にならないように、

生き物がバランスを保って生きていけるように

何か出来ることはまだきっとあると思うのだ。