足跡
夏の間ベランダで豊かに実って楽しませてくれたシシトウが
秋になり、追い肥でまたよく実を付けた。
大きく育ったそれをまとめて収穫し、
ピーマンの代わりに回鍋肉に…
既にシシトウはシシトウであることをやめて、唐辛子になっていた…。
それからのこと、仕事始めや夜寝るとき、指先がカーッと熱い。
手はいつも何度も石鹸で洗っている。
ハテ…、もしかしてこれは
通勤の途中読む、本をめくる指先だ。
どうやら唐辛子の辛さのもとカプサイシンは、そこに足跡を残し
何度もその存在をスタンプのように私の指先に残していたらしい。
そんな風にわかりやすくはないけれど、
ウイルスもまた同じようにあちこちに足跡を残しているわけだ、
と、妙に納得したのである。